3月22日 水曜 天晴れ

謎のイタリア女 

 青い空、白い雲〜♪ 絶好の遠足日よりにつき、ちょっと遠出して「シェ〜ンブルン宮殿」へ。
 正面入り口へ向かっていたら、ロココな扮装をした客引きの兄ちゃんが「今晩モーツァルトのコスプレコンサートがあるけど、来ない?」と声をかけてくる。

 やなこった、と通り過ぎたとき、弥生さんが兄ちゃんに何か言った。途端、早口のイタリア語で喋りだす兄ちゃんに、駒崎さんと私の頭は大混乱、さらに次の台詞にひっくりかえる。
君達イタリア人だったのか?(ここは英語)」
 そんなわけあるか!!この見事な一重瞼を見ろ!中国人や香港人に間違えられたことはあっても、イタリア人と言われたのは初めてだ。

 彼が言うには、英語で話し掛けたのに弥生さんがイタリア語で返事したので、嬉しくなってしまったらしい。
 日本人だというと、思いっきり不審そうに、「なぜイタリア語で答えたのか?」
 弥生さんいわく、「あなたがイタリア語を話すと思ったのよ」
「彼女はちょっとクレイジー」という非常に失礼な台詞に、つい頷いてしまった残りの二人だった。友情はどこへ・・・。

高貴なる王家の血

シェーンブルン宮殿 シェーンブルン宮殿。こここそ、かの少女漫画の名作『ベルサイユのバラ』の冒頭シーンの地である!
 初恋の人がオスカル様だった(多分。幼稚園の頃のことなので、よく覚えてない)、という暗い過去を持つ私は、感動に打ち震えてその地に立った。
 と、言いたいけど、さっきの兄ちゃんが教えてくれた近道はよくわからんし、入り口もモギリもどこにあるの?という有様。広すぎてぱっと見ただけではどこに何があるのか、把握できないのだ。
 「お前らワビサビを知らんのかー!」と理不尽な怒りを覚える。いつも思うことだが、外国に来ると自分は日本人だなーと、しみじみ感じるなあ。
←シェーンブルンからウィーンの街

 「お得な40部屋見学セット券」を買って、宮殿見学。
「26部屋早回りコース」というのもあって、そっちの部屋は混んでいる。団体客を避けながら、「そこまでせんでも…」という、装飾過剰な部屋部屋をみてまわった。

 中国渡りの寄木細工で壁が埋め尽くされた部屋なんか、30分もいたら気が変になりそう。やはり支配者は強靭な精神力をもっているらしい。日々の鍛錬が大事なのだ。帝国を治めた人々の、人知れぬ苦労に思いを馳せる。
 オリエンタリズムばりばりの、有名な「青い中国の部屋」は、改装中で見られなかった。寝転んだまま謁見ができるように、格式高いベッドが置いてある部屋は気にいったぞ。結構改装中が多く、実際は40部屋も見られなかったので、ちょっと損した気分。

 エリザベートグッズ満載の土産物屋をぬけて、幾何学模様の広ーい広ーい庭へ出る。
家庭教師の目を盗んだマリー・アントワネットが、「ほーほほほほほ」と笑いながら泉まで駆けていった、あの庭である。泉は、はるか彼方にあった。笑いながらあそこまで行ったなんて、すごいな。試しにやってみると数メートルで息切れがする。
アントワネット、肺活量はいくつだ!恐るべしハプスブルグの人々・・・。

 もう少しアントワネットごっこがしたかったので、バルコニーへ上って、下々の者(他の観光客)に手を振ってみた。社会見学の小学生が見ているが、こちらは過客、旅の恥はかき捨てるのみである。
 女王様モードの私を弥生さんたちが写真にとってくれたが、眩しくて目を細めてるので、皇室の人みたいだった。でもありがとう(笑)。

  庭を抜けると、泉の先は丘である。丘といっても高台というか、小山というか・・・。
頂上の 「グロリエッテ」(プロシア軍を破った記念に建てられたそうで、武器のオブジェで装飾されている。中はカフェ)が霞んで見える。
 黙々と、蛇行する道を登っていくと、宮殿の向こうにウィーンの街並みが見渡せるようになった。途中の芝生で寝転がって、景色を眺める・・・幸せだなぁ、ボクは(加山雄三風)。ちょっとギターを弾きたい気分。

 ここのカフェでお昼御飯にする。メニューはドイツ語と英語併記で、嬉しい。
 ウェイターは強面のおじさんで、蝶ネクタイにベストがやたら迫力。でも駒崎さんが謎のドリンクについて尋ねると、おいしいよ、と教えてくれた。怖いのは顔だけだったか。
 レモンソーダは酸っぱかったけど、マッシュポテトにモッツァレラチーズを乗せて焼いたのと、野菜の付けあわせは美味しかった。

 ウェイターはそれぞれ腰につり銭袋を下げていて、その場で会計を済ませてくれる。一応確認したところ、手書きのレシートは数字だけで、どれがどれなのかわからない。
 メニューも見てみると、食べたのと同じ値段のはなく、違うのはある。その上、足し算まで間違ってるという、アバウトさ。こちらもどうでもよくなってしまった。

 ところで、カフェのお客にちょっと男らしい女性(子連れ)がいたのだが、彼女の後にお手洗いに行った駒崎さんが、興奮の面持ちで帰ってきた。
 「便座が上がってた!」「・・・は?」
 「女性用トイレで、便座を上げる必要がある?」普通は、ない。我々の次のように推測した。

 @ 彼女は実は男性で、女子トイレで用を足していた 
 A 単にそういう習慣なだけ。この場合、同居の男性に気を使う、優しい人柄と思われる

 全く余計なお世話である。もちろん結論が出ることはなかったのだが・・・。

たまには健全な夜

応用美術館 市内に戻ると、まだ時間があったので、頑張ってもう1件「応用美術館(MAK)」へ。19世紀末のデザイン集団「ウィーン工房」のアクセサリーやイラストが見たかったのだ。
 ネオ・ルネッサンス様式という建物自体も美しく、青と黄色の幾何学模様のステンドグラスが、モダンな感じ。
                        応用美術館のステンドグラス→

 家具や食器など、工芸品主体(応用芸術と称するそうだ)の美術館で、椅子の展示はスクリーンの裏からシルエットを楽しむ、という趣向。休憩用ベンチと展示品が入り混じっていて、どきどきした。
 コンクリート打ちっぱなしの部屋には、一面にタペストリーが張り巡らされていた。一見無造作な展示は、荘厳ささえ感じさせる。非常にセンスの良い展示で、名も知らぬ学芸員のファンになってしまった。

 凝った階上の展示と裏腹に、地下の展示は殺風景で、収蔵庫にケースを入れただけ、という感じ。
 陶磁・金属・ガラスなど、素材ごとに分類してあるが、「へヴィ・メタル」という部屋には別のものを想像してしまった。
 東洋陶磁の部屋には、ヨーロッパで作られた類似品も収めてある。ピンクのドレスや赤い花柄のガウンを着た、髭の中国人男性がハープを弾いている人形を見たら、どっと疲れた。ベンチに座り込んだまま動けず、閉館まで粘る。人気がないのでそのまま閉じ込められそうだった。

応用美術館前の花屋←応用美術館前の花屋 

市電でオペラ座の前まで行き、目をつけていたMで始まる高級スーパー(勝手に明治屋と命名)で、晩御飯を買いだしする。チーズ、サラダ、パンに地元のワイン、長さ30センチもある葡萄を一房。
 サッカーのヨーロッパチャンピオンズリーグの生中継ディナモ・キエフ対バイエルン・ミュンヘン(時差がないから夜8時から!日本ではいつも朝の3時とかなのに)を見ながら部屋で食べる。ワインのコルクが硬くて、結局フロントで開けてもらった。

 

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